東京・秋葉原とつくばを最短45分で結ぶ「つくばエクスプレス」は、この8月で開業1周年を迎えた。開業と同時にNTT-BPが提供する列車内無線LAN サービスの実証実験「つくばエクスプレストライアル」を実施していたが、今年8月には、サービスエリアが秋葉原ーつくば間全線に拡大され、NTTドコモの「Mzone/mopera U」によるサービスとして正式に提供されることが決まった。
もちろん、商用列車内無線LANサービスとしては日本初であることは言うまでもないが、総延長 58Kmという長距離移動体サービスは世界的にもあまり例がない。 (池田冬彦 2006/11)

駅も列車内もシームレスに利用可能
さっそくアップルの「MacBook」を持ってつくばエクスプレスの秋葉原駅へ向かい、お目当ての電車を探すことにした。というのも現状ではすべての列車が無線LANに対応しているのではなく、「TX-2xxx」という2000番台の車両番号を持つ列車のみ対応しているからだ。ちなみに「TX- 2160」という編成は2005年8月の開業当初からの“元祖”無線LAN列車で、現在はすべての2000系列車(16編成)が無線LANに対応している。
秋葉原の地下ホームは既にMzoneの対応エリアであるため、MacBookからは「docomo」と「tsukuba」という名前のアクセスポイント(SSID)の存在が確認できる。本サービス開始後はホーム/列車共通の接続先として「docomo」に一本化される。実証実験のモニター利用者の場合は対応列車がホームにいなくても「tsukuba」に接続できるので、とりあえずベンチなどに座って接続しておき、そのまま列車に乗り込めばいい。
Windowsからのアクセスは「ワイヤレスネットワークの選択」画面で「tsukuba」という名前のアクセスポイントに接続するだけだ
Macの場合はAirMacメニューから「tsukuba」を選んでWebブラウザを起動させる。基本的な認証方法はWindowsと変わらない
なお、Mzone契約者であればつくばエクスプレスの全駅と列車で利用できるようになる予定だが、取材日は無線LANトライアル期間であったため、Mzoneのアカウントでは車内ではインターネットに接続できなかった(注:現在はMzoneのアカウントでアクセス可能)。
トライアル用の「tsukuba」のアクセスポイントはWEP/WPAのセキュリティがかけられておらず、Windows、Mac共にすんなりと接続できる。その状態でWebブラウザを起動すると認証画面が表示されるので、IDとパスワードを入力して認証すればOK。あとは自由にインターネットにアクセスできる。このような「Web認証」は特に複雑な設定をせずに接続できるのがメリットで、現在の公衆アクセスシステムの主流になりつつある。
ほぼ全経路で快適なアクセスが可能
アクセスポイントに接続した状態で列車を待っていると、ほどなくつくば行きの快速電車がやってきた。車内に乗り込んでWebブラウズやメールチェックを試しているうちに、いつしか列車は秋葉原駅を離れていた。
途中駅のホームに停車中の時はもちろんだが、移動中でもまったく問題なくインターネットにアクセスできる。トンネルに入った途端に電波が途切れがちになったこともあるが、再接続時に再認証の必要もないのでそれほど不便は感じない。車内での実効速度だが、おおむね1Mbpsといったところだ。大量のデータをやりとりしたり、1Mbps以上のストリーミングビデオを見る、といった用途にはキツいが、通常のWebブラウジングやメールチェックといった利用なら問題なしだ。
最高時速130Km/hで疾走する列車内で、これほどまで快適なインターネットアクセスができるのは驚きだ。ブロードバンド列車を実現させるには、何らかの形で列車と外部との通信経路を確保する必要があるが、NTT-BPではこの仕組みを、鉄道沿線、駅上に設置した無線LANアクセスポイントと、これらのアクセスポイントをつなぐ無線中継システムでカバーしている。
無線LAN対応列車には小型の無線LANアンテナが装備されており、駅や沿線上のアクセスポイントからの電波を常にキャッチしている。駅両端に設けられた指向性アンテナのカバーエリアは約800mで、そこから先は500mをカバーするアクセスポイントを並べ、列車は高速にハンドオーバーしながら進んで行く。中継システムは日本無線(JRC)とNTTが開発した「WIPAS」というシステムが採用され、5GHz帯の電波で27カ所のアクセスポイントを結んでいるのだ。
パケット代金を気にせずにいくらでもインターネットできるのは無線LANならでは
まさに移動体サービスの先駆け
一通りの動作確認を終えて車窓に目を向けると、列車はいつのまにか利根川を渡り茨城県守谷に到着していた。秋葉原からここまでの乗車時間は約32分。先ほどまでの大都会の喧噪がウソのような、のどかな田園地帯が広がっている。原稿を書いたり、メールの返事を書いたり、いつものWebサイトを巡回しているうちに列車はつくば駅に到着した。
この日本初の商用サービスは、公衆移動体ブロードバンド通信の可能性を大きく開いたと言えるだろう。つくばエキスプレスのような、「誰にでも良さが実感できる」高度なサービスを達成するには莫大な投資が必要だが、世は一歩一歩、着実にユビキタスに向けて動きはじめている。まさに、ブロードバンド列車は快適そのもの。夢の移動体通信の威力を実感した次第だ。
本稿は2006年9月での実地検証の結果を元に、株式会社デジパホームページの「トレンドウォッチ」に掲載した記事を再掲載したものです。
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